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灰の世界の魔導学  一章の続き 



題名そのまんま
一章の続き。
コメントをもらうと馬鹿みたいに喜びます。





「おお。おい見ろバルセロ!」
 階段を下り、外と同じく石造りの地下室に入ったところで興奮気味にイリーナが彼を呼んだ。バルセロが手にする魔導式ランプの白い光が、部屋の隅々に転がるぼろを纏った骸骨達を照らし出す。
「この骸、骸、骸! 方程陣が擦り切れていて下に落ちたのだろうな。遺跡を荒らすような輩、天誅だ」
「おいおい、悪趣味だな」
 気味が悪そうに階段を下りるバルセロを、少女は鼻で笑う。
「何を言っている。男の癖に頼りがいの無い奴だな!」
「これはまた……猛々しいことで」
 上機嫌で中を見渡していたイリーナだが、ふとうつ伏せに倒れる一人の前で立ち止まった。
「ん? コイツ、白骨じゃないな。腐っているわけでもないようだし……」
 そう言って、黒いブーツのつま先で頭をつんつんと突く。
「…………す……」
「……え?」
「……水、くだざ……い……」
 がしっ、と突いた足の足首を掴まれた。
 さぁ、とイリーナの顔が青くなる。
「ぎ、ぎゃああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁあっぁッ!」
 まさに絶叫という声が、石の壁に轟々と反響しバルセロは思わず耳をふさいだ。
「放せ! 放せっ! 放してくれ!!!」
 偉そうな態度が完全に崩れている。尻餅をついて倒れた本人はそれに構っている余裕は無いらしく、子供のように喚き散らしている。
「うわぁああ゛あ゛あ゛! うわぁあああ゛あ゛あ゛あ゛!」
「……おねがい……水……くだざい」
(なんか、凄い事になってるな……)
 一人冷静に状況を観察していたバルセロは、一つ溜息をついてイリーナが一方的に喚く二人に近づいた。
「おい、イリーナ。……スカートめくれてるぞ」
「うわああああぁん、うわああぁ……、……え? あ?! うわああああああああああああ!!! 馬鹿っ、馬鹿者! 何を見ている?!!!!」
 慌てて丈の短いスカートを押さえるイリーナ。
「いや、冗談だけど……」
 イリーナが掴まれた足を振り払い、すばやくバルセロの後ろに隠れる。バルセロは倒れている盗掘者に近づくと膝を着いた。
「おい、あんた大丈夫か?」
「……水……」
 何とか聞こえるくらいに掠れた声。バルセロは荷物から水筒を取り出し渡してやる。
「あ、りが……ござ……す」
 ゆっくりと起き上がると貪る様な勢いで喉を鳴らして飲み始めた。数十秒かけて、水筒の中身を空にするとようやく息をついた。
「ふぅ……ありがとうございました」
 水筒をバルセロに返し、盗掘者は被っていた深緑のフードを脱ぐ。
 さら、と綺麗な金色の髪が白い頬を撫ぜた。
 黒い、男物の簡素な服と、同色のゆったりとしたズボン。その上からフードの付いた深緑色の外套を纏っていたので、男かと思っていた。
 さっぱりとした髪はやや短く切られているが、バルセロと同い年くらいの少女だった。
「あ、全部飲んじゃいました」
「いや、別にいいんだけど……」
「……お前」
 バルセロは後ろを振り返る。彼に隠れるように少女を観察していたイリーナが、唸る猫のような声で低く尋ねた。
「お前……この遺跡に何をしにきたのだ?」
「え? え、あ……えっとぉ」
 キョトンとした後、挙動不審にあたりを見回す彼女を見て、イリーナの双眸は猫のように細くなる。
「やはりお前、盗掘者だな!」
 先ほど、幼子のように泣きじゃくった人物とは一転し、雷の如くの叱声が飛んだ。
「灰の荒野の遺跡は全て、今亡き者達の墓のようなもの! それを荒らすとは、死した者達への冒涜。ここで歯を叩き折ってくれる!」
「ひぃっ」
「おいおい、待て待て」
 いきり立って前に出たイリーナの腕をバルセロが掴む。
「ええい、放せバルセロ!」
「怪我してるだろ! だいたい、女を殴るなよ」
「私も女だ! 問題なかろう」
「あるだろう!?」
「あ、あの」
「なんだ盗人!」
 イリーナに凄まれ、少しひるんだが彼女は続けた。
「あ、貴方達も……同業者ですか……?」
「はぁ?」
 バルセロは的外れな質問にイリーナと顔を合わせる。
「いや、俺はそういうわけじゃない」
「そうだ。第一、この時代の方程陣を盗むなど愚かしいにも程がある!」
 腕を組み、イリーナは独り言のように憤慨し始めた。
「全く、最近の若い者共は……金になれば何にでも手を出しおって。真面目に働けば貧しくとも幸福というものなのに……」
 十代半ば程の少女の口から出るにはかなり違和感のある言葉。しかし、相棒の青年は特に気にせず聞いている。
「おい、小娘!」
「小娘ぇ?」
 明らかに同年代、しかも年下の少女に小娘といわれ盗掘者は素っ頓狂な声を出す。
「何をうろたえる? 小娘はお前しかいないだろう」
「いや、同年代だと思いますけど……」
「はぁ? 何を言っ……、…………いや、そうだな。そういう風に見えるだろうな……」
 なにやら再びぶつぶつ言い始めたイリーナに代わり、バルセロが声をかける。
「俺はバルセロ。そこの三つ編みはイリーナ。アンタは?」
「あ、……アリシア・ノースクリフです」
 差し出された赤いグラブの手を握り、アリシアは答えた。
「まぁ、ここであったのも何か縁だしな。アンタ、盗賊って訳じゃないんだろ?」
「え、はい」
「じゃあ、一緒に行くか」
「ちょっと待て! こいつ盗掘者だぞ?」
 そこで一人悶々と呟いていたイリーナが二人の会話に割り込む。
「俺等も似たようなものじゃないか」
「違う! 断じて違う!」
 イリーナは地団駄を踏んだ。
「大体、怪我をしているのだろう? ついて来れないではないか!」
「あ、そうですね」
 アリシアは左足首を押さえる。ひどく痛い。思わず顔をしかめてしまい、それを見てイリーナが気遣わしげに眉を顰めた。
「じゃあ、なおさら置いていったら駄目だろ?」
「ぐぅぅうう……」
 悔しげにイリーナは唸り、やがて立ち上がるとアリシアから背を向けた。
「仕方が無いな。怪我をし、困っている者を見て見ぬ振りをするほど私は鬼畜ではない。今、困っているお前を、私達は嫌々でも助けてやるのが道理であろう」
「長ったらしい言い訳だな」
「うるさい! さっさと手当てしてやれっ」
 もうこれ以上話しかけるな、と言うような態度でイリーナは沈黙する。
「すまん。ああ見えて泣き虫で寂しがりやで友達がいない、素直さの欠片も無い奴なんだ。悪く思わないでくれ」
 ランプを手元に寄せながら、こそっとバルセロがささやく。
 泣き虫で寂しがりや……。尊大な態度をとるあの少女に、とても似合わない言葉だ。しかし、自分の足を心配してくれたあたり、悪い子ではないのだろう。
「じゃ、足出してくれ」
「あ、はい」
 そう言って足を出し、バルセロが手にしていたものを見て硬直する。
「ん、どうした?」
「い、いいいいや、そ、それを、どうするつもりですか!」
 バルセロが持っていたもの……。彼はごく普通に近くにあった骸から肋骨とぼろ布を拝借していた。
「ああ、添え木の代わり」
「絶対嫌です!!」
「わがまま言うなよ」
「いやあああああああああぁぁぁぁぁっ!」
 結局、代わりになるものは無かった。
「うううぅ……。呪われる、呪われるぅ……」
 彼の応急処置は的確で痛みはかなり気にならなくなったが、それ以上に不快感が増えた。やはり以前ここに落ちたのだろう盗掘者の杖を拝借し、アリシアは立ち上がって呟き続ける。
「うぅう……」
「文句を言うな! こっちの気が滅入るではないか」
 唸り続ける彼女にイリーナが怒鳴った。
「でも、でも、でもでも……人の骨ですよぉ?」
「呪いなど無い」
 イリーナが断言する。
「そう信じる者にはその効力は在るのだろうが、信じぬ者に幻想は存在しないのだ」
「そ、そうなんですかぁ?」
「うむ」
 力強く頷かれ、一応アリシアもそう思う事にしたようだ。
 イリーナは次の部屋に続く扉を探すバルセロを振り向く。
「バルセロ、あったか?」
「ああ」
 二人が降りてきた階段。その影からバルセロが現れる。
「行けるか?」
「は、はいぃ」
 かつかつと杖を突きながらアリシアは階段の裏にある扉へと向かう。彼女の背中を見ながら唇を動かすだけで、声には出さずイリーナは独白した。
(……望まなくとも、そこに存在する者も在るがな……私のように)










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